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(3)千葉騒音おばさんへの判決 [騒音おばさん]

 ところが、12月頃、市川被告のA一家への嫌がらせが始まる。地域のごみ捨て場にゆくには市川被告の家の前を通らなければならなかったが、市川被告はA一家の母親に「私の家の前を通るな」とねじこむ。門につばを吐きかけられたり、表札にタンをはきかけられたり、庭の椿の枝が切らたり、ゴミを投げ込まれたり、車に傷をつけられたり、敷地内に侵入して草花に除草剤をまかれたりなどだった。

「やめてくれ」と直接注意もしたが、A市川被告はおさまらず、A一家は警察を呼ぶようになったが、被告の嫌がらせはエスカレートし、A一家の家に向けて大音量のラジオを流しす、職場に「A家の父親はストーカー」などという嫌がらせの電話をかけるなどした。市川被告は「土地売買契約解除の件から感情的なしこりができた。隣の敷地から葉っぱが出ていてちぎった」としている。

 一度は、突然市川被告から「仲直りのための調停申し立て」の書面が届いたが、翌日にはまた門につばを吐かれたという。A一家が調停に行くと、市川被告は突然調停を取り下げてしまった。結局、A一家は平成17年3月に引っ越した。

 4月から入居した家族に対しても市川被告は、騒音をたてる、モノを投げる、ゴミを門前に捨てる、建物を敷地いっぱいに増築するなどの嫌がらせを行い、その家族は7月にひっこしてしまった。

に言うと『うるせえ、クソばばあ。追い出してやる』と言われた」と市川被告は主張しているが、原告側は「そのような事実はなく、引っ越してまもなく一方的な嫌がらせが始まった」としている。

 市川被告は「隣の植木が自分の敷地に入っているのが気になってしかたなかった。つい見ていると、『覗かないで下さい』と言われ、それから出て行ってほしいと思うようになった」と主張している。
「隣に出て行け、監視カメラを外せといったことがあります。私は被害者だったのです」

 迷惑行為の実態は、相手宅門につばを吐くことから始まり、「しっしっしー」「出て行け」「のろい殺してやる、ワッハッハ」など、ほとんど毎日隣家の前で怒鳴ったというもの。塀から身を乗り出して植木の葉をむしる、夜中に執拗に覗き込んでは写真を撮る、塩素系の薬品を庭にまくなど、自宅前の道路にはみ出して数多くの植木鉢を並べるなどした。宣伝カー並の大音量でラジオを鳴らすなどの近隣一帯に迷惑をかける行為を続け、警察から100回以上注意を受けていたが、全くおさまらなかったという。

 市川被告は、「あなたたちの事は探偵に調査済み」「呪い殺す」と言ったことは認めているが、「『シッシッシ』と言ったのは、実は隣家の木の枝が自宅敷地まで伸びていないのを『よし、よし』と独り言で言っただけ」「つばを門に吐きかけたわけではなく、たまたまそこが門だっただけ」などと主張したが、08年1月、「繰り返し隣家に絶大な精神的苦痛を与えたかを、本当に反省しているのか疑問」と懲役10カ月、執行猶予3年の有罪判決が下った。

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(2)各地「騒音おばさん」 [騒音おばさん]

 妄想性人格障害に関しては、ミロンは、「ことに、自らの中の共感性や、やさしい感情に対して抑圧的である」とする。なぜならば、彼らにとっては、そのような感情は、押さえつけておかなければ、他人に引き込まれ、策謀にはめられかねないことになると考えている。このために、彼らは距離をとった客観的な態度を装うにとどめている。

 パラノイドに最も典型的なのは、いらいらしていて、妬み深く、嫉妬深く、ほんのちょっとした刺激に対してもすぐに怒り出すことである。彼らは、ユーモアを欠いている。また、他人への共感性を抑圧しようとするので、他人に攻撃を加えても、相手のこうむる感情に対してはきわめて鈍感である。

 彼らは、不機嫌でユーモアを欠いている。厳格で頑固である。時には、力が彼らが想定する脅威に対する防衛にとどまらず、敵意によって「自分は屈していない」という思いを感じることもできる。だが、この敵意には積もり積もったものであり、いったん引き出されると、それまでに蓄積された怒りが爆発することもある。些細なはずの出来事に対して、過去から鬱積している怒りが焚きつけられ爆発することもある。

各地騒音おばさんの心理

 元祖騒音おばさんとしては、約10年間にわたり隣家に向けて大音量で音楽を流しながら「引っ越し!引っ越し!」と怒鳴るなどして頭痛・不眠などを起こさせたとして2005年に傷害罪で逮捕された奈良県平群町在住の主婦58歳(当時)が有名である。有罪判決が下ったが、その後、この主婦が、二人の子供を遺伝性の病気で亡くし夫も寝たきり状態だったこと、被害者一家にも無用にこの主婦を刺激する言動があったことなどが報道されており、本書では妄想性人格障害の事件例として位置づけることは避けたい。

千葉騒音おばさん

 昭和63年、A一家4人が、市川晴江被告(当時64才)の家の隣に引っ越してきたが、最初はトラブルはなかった。ある日、被告夫婦が、彼らの家の土地の一部28坪を買ってくれ、とA一家に持ちかけてきた。断ったが、再三被告夫婦が同じ話を蒸し返してくるので、購入に応ずる旨を話すと、8坪が25坪、次は22坪とその後話は二転三転、ようやく平成9年5月契約成立、家を少しずらさないと22坪が確保できないということで、市川被告方の工事が終わってから売買をすることになった。引き渡しの日は11月30日という契約だったのに、10月まで、いっこうに家を動かす気配がなく、市川被告は「やはり家を移動させたくないので、駐車場として確保している土地分(5~6坪)だけ売りたい」と言ってくる。A一家はこれには納得できず、「15坪、1000万円なら買う」と提案し、被告も合意し、再度引き渡しの予定日が決められた。

 しかし、その予定日まで被告は契約書を持ってこず、引き渡し期限の日に、市川被告の娘婿が「代理人」として登場し、一切の契約を破棄したいと通告した。A一家は隣同士ということもあり、ことを穏便に済ませようとして最初の契約にあった違約金の半額以下の違約金を求めるにとどめ、契約破棄の合意となった。


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(1)大阪騒音おばさん(2009)と妄想性人格障害 [騒音おばさん]

 吹田市の井手真知子容疑者(犯行当時49歳)は平成7年ごろに転居してきて約1年後から嫌がらせを始め、約10年間続けてすでに2軒が引っ越した。「自宅に傷を付けた」などと言って隣の外壁をたたく、ごみや油をまく、金属製のボウルを打ち鳴らし「早く死ね。出て行け」と叫ぶなどした。これらの行為に関して、井手容疑者は「私の方が被害者だ。相手から殺すぞと言われ、反撃しただけ」と主張している。他に、通りかかった車の行く手をふさぎ、「なめやがって、殺すぞ」などと大声を上げるなどした。

 ある週刊誌に容疑者宅の異様な相貌の写真が掲載されている。「大阪騒音おばさん」の家の周囲を囲む塀には、鋭利な切っ先がついた突起が上を向いて並んでいるだけではなく、家の外部に向かっても並んでいる。また、これまた上に棘状の突起が並んだ鉄の門には、三つのインターホンが置かれ、それぞれには「触るな」と書いてある。さらに、このインターホンを動かそうとすると、鈴がなるような仕掛けになっている。家には猛犬が飼われていたが、この猛犬が盗まれることをおそれていたのか、犬の首輪にまで南京錠がかけられている。家には、9台の監視カメラが設置され、家の前を通るだけで「侵入すると、通報する。ただ今警戒中」とセンサーが警戒音を出すようになっていた。

 この建物に見られる「他者を警戒し固く拒む姿勢」は妄想性パーソナリティ障害を象徴している。そこには、他者に対する共感性はうかがわれず、他人にどれほどの苦痛を与えているか関心を向けない。「敵意を燃やしている」ことによって「自分は屈していない」という思いを感じることができる、というミロンの指摘は、この騒音おばさんの怒りが10年間持続したことを説明するものである。

 これは話題にはなったが、重大犯罪とは言い難い。ただし、妄想性人格障害の特徴をよく表している。妄想性人格障害はパラノイドとも呼ばるもので、周囲の人々の言動を、自分に攻撃を向けるものとして悪意に解釈する特徴的な認知パターンを持った人格障害である。通常、妄想性人格障害は、「周囲は敵ばかり」と恐れ、社会からひきこもりがちであるが、騒音おばさんの幾つかの事例で見られるように、「自分を攻撃している他人」に対して積極的な攻撃的態度を示す場合もある。

(このブログは拙著『窒息する母親たち』を分割して連載してゆきますが、同時並行的に、私が他の拙著で取り上げた事件についても、分割した上で掲載します。のちほど、事件別にカテゴリーを作成して見やすくする予定です)


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