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(1)レアケースくまぇり

ホームページにドアップで映し出された顔は確かに美人だ。「ギャル文字」と幼児語でいっぱいなそのホームページは動物や可愛らしいアイコンまで置いてあって、いかにもイマドキの二十歳、という感じ。ちょっと見ただけでは連続放火事件容疑者のホームページとは思えない。

 

18年の4月から5月にわたって長野県下諏訪で連続20件近くの放火事件があった。死傷者はでなかったにしてはメディアに大きく取り上げられたのは、容疑者が人気タレント熊田曜子に自称「日本一のそっくりさん」こと平田絵里香容疑者(20歳、以下、ホームページのニックネームを用いてくまぇりと呼ぶことにする)が自ら放火したという嫌疑がかかっている火事現場を撮影しては自分のブログに派手な炎上画像を掲載していた、という特殊性である。

 

私がこの事件について一章をもうけるのは、テリー伊藤・香山リカ・宮崎哲也諸氏を前にして容疑者のブログの文章を指摘しながら「演技性人格障害」と解説するなど都合3回テレビで「演技性人格障害と思われる」とコメントしているから、というにとどまらない。この事件は、演技性人格障害の犯罪というレア・ケースであり、かつその動機が演技性人格障害の本質に深くかかわるものである、という点で注目に値するものなのである。

 

まず、確認しなければならないことは、「演技性人格障害と犯罪との間には特に結びつきがない」ということである。元来、犯罪傾向は他者との関係よりも、自分の利益を中心に考え、大胆不敵に行動する反社会性人格障害や一部の自己愛性人格障害などの「自己チュー系」であり、依存性人格障害・演技性人格障害などの「他人の好意を当てにしている卑屈系」には希薄である。

 

非行仲間へのウケ狙いの犯罪行為は皆無ではない-現代性を持つくまぇり

 

 

もちろん、演技性人格障害に犯罪がないと言い切れるわけではない-ミロンもサブタイプには逸脱行動がみられがちであることを指摘している。

 

だが、演技性人格障害の犯罪とは、せいぜい「非行グループの中に巻き込まれてしまい、仲間うちでいいところを見せようというような本質的では注目を求めるだけの行動(ただし、その仲間が反社会的な価値規範を持っているので、結果的に、ウケ狙いにすぎない行動が反社会的行動になってしまう)と、痴話喧嘩に絡んで感情任せに刃傷沙汰に走ってしまった、というようなみみっちい犯罪だと考えてよいであろう。せいぜい、非行仲間に喝采を浴びようとして万引きをする窃盗犯や、別れ話に逆上して我を忘れて包丁を振り回したところ相手をかすってしまったというあたりだろうか(後者のような場合でも演技性人格障害は、「止めないで!」と叫びながら相手が十分に阻止できる程度の速度でマンションの手すりを乗り越えようとするドラマチックな自傷行為など、自分の方に包丁が向けられる場合の方が多いだろう)。

 

その点で、死傷者は出ていなにせよ、放火という悪質な行動に走るというのは演技性人格障害の犯罪としてはレア・ケースといえるだろう。

 

だが、くまぇりの場合、ブログを介して注目を集めようとするという演技性人格障害における奇妙な現代性が見られるのだ。


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